平成27年1月1日以後、相続税の課税ベース拡大に伴い、納税義務者が増加しました。相続税の課税割合を基礎控除引き下げ前と後でみるとその変化は顕著です。
相続税の課税割合の変化(上位20位まで)
※課税割合とは、相続税の申告書の提出に係る被相続人数÷被相続人数(死亡者数)
都道府県 |
平成26年分 |
平成27年分 |
東京都 |
9.7% |
15.7% |
愛知県 |
8.1% |
13.8% |
神奈川県 |
7.0% |
12.4% |
埼玉県 |
5.4% |
9.9% |
静岡県 |
5.1% |
9.7% |
京都府 |
5.6% |
9.1% |
奈良県 |
4.8% |
8.9% |
岐阜県 |
4.3% |
8.7% |
兵庫県 |
4.9% |
8.4% |
千葉県 |
4.3% |
8.3% |
広島県 |
4.4% |
8.3% |
大阪府 |
5.0% |
8.2% |
群馬県 |
3.6% |
7.6% |
香川県 |
3.6% |
7.6% |
三重県 |
3.2% |
7.0% |
富山県 |
2.8% |
6.9% |
福井県 |
3.7% |
6.9% |
岡山県 |
3.5% |
6.8% |
長野県 |
3.3% |
6.7% |
滋賀県 |
3.3% |
6.6% |
全国平均 |
4.4% |
8.0% |
都道府県でみると、被相続人(死亡者数)に対する相続税の課税割合は、愛知県が前年比約1.7倍(8.1%から13.8%)、岐阜県は約2倍(4.3%から8.7%)です。ともに全国平均の8%を超えています。しかも両県は、愛知県2位、岐阜県8位と全国のベスト10位以内です。なんと、岐阜県が、兵庫県や大阪より、課税割合が大きいのです。これは、ご承知の通り、基礎控除の引き下げによるところが大きいのですが、全国の税務署は、適正申告の推進という観点から、一定の人に現在「
相続税の申告等についてのご案内」及び「
相続税の申告要否検討表」という書類を送付しています。
「相続税の申告等についてのご案内」という書面には、概ね次のように記載されています。
- お亡くなりになられた方の資産の総額が基礎控除額を超える場合には、××までに、亡くなられた方の住所地を所轄する税務署へ「相続税の申告書」を提出し納税をしてください。
- お亡くなりになられた方の遺産の総額が基礎控除に満たない場合には、「相続税の申告書」の提出は必要ではありませんが、申告の要否を確認させていただくために、同封の「相続税の申告要検討表」の回答欄に該当する事項をご記入の上、××ごろまでに当署資産課税(担当)部門へご提出くださいますようお願いいたします。
これらの書類は、国税庁の独自システム(KSKシステム)により抽出した相続人等を対象として送付されており、その抽出基準は不明ですが、被相続人の保有見込財産の価額など一定の具体的基準が設けられていると思われます。また、同書類は、申告期限(死亡の日から10ヶ月後)の4ヶ月前をめどに送付されるようです(例えば、相続開始月が1月なら、同年の7月に申告案内書面が送付されるということです)。
では、仮に上記2.の遺産総額が基礎控除以下に該当した場合、「相続税の申告要否検討表」を提出する必要があるのでしょうか。この検討表の提出依頼はあくまで納税者の協力のもとに行われる行政指導であり、提出しなかったからといって、罰則があるわけではありませんが、こうした行政指導に協力せず依頼されたものを提出しないのは、印象がよくないのも事実です。税務署としても、もともと課税が生じる可能性があるとの前提の下に、書類を送付しているのですから、「相続税の申告要否検討表」を提出しない場合には、署から提出を促す連絡が来ることが予想されます。また、こうした書類の送付後、申告期限を過ぎても、「相続税の申告書」の提出又は「相続税の申告要否検討表」のいずれも提出されていない場合には、税務調査の可能性があり、その結果、申告不要となればよいのですが、税額が発生した場合には、期限後申告または決定処分となってしまい、無申告加算税や延滞税といったペナルティーが課されることになります。
いずれにしても、税務署から「相続税の申告等についてのご案内」といった書類が送付された場合には、不安のまま放置されるのではなく、ご面倒でも、専門家に相談して、その対応をご検討されることが望ましいでしょう。
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